行灯の街角

【行灯の街角】

見る影もないその焼け跡に

ただ一人僕が立っている

もう混ざってしか生きてゆけない

この僕が此処に立っている

珍しいものはお好きですか？

なら飾り立ててあげましょう

染み渡った悲しみのヴェールで

くだらないのよ

計算機でできたパズルの街に

飽き飽きしてきたの

きなくさいのよ

コンクリートの自堕落と生きる自分に

心底呆れるわ

崩れゆく地面と建築の跡に

ただ人は忘れてゆくばかり

見境なく距離を失ってゆく

この人たちは忘れていく

暖かい手はお好きですか？

なら暖めてあげましょうか

冷めた熱めの枝先指先で

みすぼらしいのよ

数えきれない忘却の波に

私たちは呑まれる

嘆かわしいのよ

今でもしなやかな心の後は

汚い私たちの街だけ

間に合わない復旧作業は壊れた自己の回想みたい

ちらつくネオンの街角で

一人淋しく行灯（あんどん）に火をつけて

くだらないのよ

計算機でできたパズルの街に

飽き飽きしてきたの

きなくさいのよ

コンクリートの自堕落と生きる自分に

心底呆れるわ