気づいた帰り風
【気づいた帰り風】
二つに分かれたこのみちを
僕はただ立ち尽くして待つ
見境なく続くこの空で
淋しそうな風が心をくすぐる
短い思い出と車窓の感想は
言おうとしたことも思い出せない
何があるのか怖くて下を向いていた日々を
大人になって初めて気づいた
すり抜けていく人の中
私は自分の道を見つけた
見えずにいた他人の闇を
私は心に重ねて初めて気づいた
持ち味を生かした生き方は
案外難しくてできそうにない
打ち付ける雨の冷たさは
あの時の殴り合いの帰り風
馴染んでいた部屋の違和感に
静かになった僕は言う
「あの頃は良かったね」
振り返った時計に針はなかった
今この時に恥ずかしい
この気持ちが再発してしまう
それが何を表していたのか
気づけないまま過ぎていった